バージニア サティア (Virginia Satir)の紹介
バージニアサティアは家族療法を最初に導入した人で
20世紀最高の心理療法家とも言われていますが、
日本語による紹介はほとんどなされていないようでWEB上で検索しても日本語の
情報はあまり見付かりません。そこで私が理解した範囲で紹介を書いてみることに
しました。
なぜ家族療法なのか?
子どもが様々な問題(犯罪、家庭内暴力等)を起こすことがあり、
従来の見方ではその問題を起こしている子どもに問題があるのでその子どもだけを
治療すれば良いとされてきた。しかし、サティアは子どもの問題は家族の有り方、
特に家族間のコミュニケーションの仕方に問題があるので、子どもが問題行動を
起こすと捉えた。サティアの見方に立てば子どもだけを治療しても問題は
解決しないことになる。そこでサティアは家族全員と一度に対話して治療を
行う家族療法の手法を始めた。
なぜ子どもが問題行動を起こすのか?
サティアによれば、問題行動を起こす子どもがいる家庭では、
その子どもが問題行動を起こす前から家族全員が心に痛みを感じている。
心の痛みに耐えられなくなった子どもが問題行動を起こして、
カウンセリングなどに来ることになると言っている。
それではなぜ家庭の中に心理的な痛みが溜って爆発するのか?かなり単純化すればサティアの
見方は以下のようになる。
- 自分が生きる価値のある人間だと思えない男女が、
この人とつき合う/結婚することによって、自分のことを生きる価値のある人間だと見做せるように
なると思って結婚する。ちなみにこの男女は自分のことを生きる価値のある人間だと思っていないので、既に心に痛みを感じている。
- しかし、しばらくすると配偶者が自分の価値を高めてくれるわけではないと気づく。
- そこで、自分の一部または延長のように見える自分の子どもに素晴らしい生き方をさせることによって、自分の価値を高めようとする。
- そのために子どもを自分の価値観にしたがってどんどん操作する。
- 子どもは自分の欲求や感情を無視または否定されながら親の価値観に合わせようとするので、
そのうち耐えられなくなって問題行動を起こすこともある。
従って治療としては、親の子どもとのコミュニケーションの仕方を変えることが必要である。
特に子どもの感情や欲求を親が受け入れられることが必要であるとサティアは主張している。
アダルトチルドレンとの関連
上のようなものの見方は少し前に流行ったアダルトチルドレンの考え方と近い。
アダルトチルドレンの文献に現れる「機能不全家族 (dysfunctional family)」という
言葉を使ったのはサティアが書いた
サティアは「Conjoint Family Therapy」が最初ではないかと思われる。
あまり適切でない子育てをされた人は、不幸になりがちな行動パターンを家庭内で身に付けているので苦労しがちだが、そのような場合でもサティアは「親を許し、親が親の知識と能力の範囲でベストを尽くしたことに感謝する」ように、下で紹介する伝記の中で勧めている。
このことを私なりに解釈すると、親に限らず他人に対する怨みや憎しみを心に抱えているとそれだけで客観的状況が同じでもかなり主観的に不幸になるので、幸せになりたければ親を怨むのはあまり得策ではないということだろう。
サティアの考え方がわかる資料
英語でよかったらNew
Peoplemakingが一番良いと思う。
この本はサティアが問題児を作らない家庭をどのように作ればいいか自説わかりやすく述べ、
多くの練習を含めている。
日本語の本は「合同家族療法」(岩崎学術出版社より1970年に発行,
ISBN 4753370011)しか無いが既に絶版である。
図書館などで取り寄せられる。この本は私は読んでいないが
日記
で高く評価している人がいる。原書の
Conjoint Family Therapy第3版は読んだがいい本だった。
サティアの伝記は「Virginia Satir: Her Life and Circle of Influence」に詳しい。
その他にはサティアが治療を行っているDVDがいくつも売られている(もちろん英語)。
その中で会話が本の形で出版されているものに
「Forgiving
Parents」がある。会話が本になったものは
「Virginia Satir: The Patterns of Her Magic」で、
NLP Comprehensiveから
比較的安く購入できる。