近年量子力学を計算・通信に応用する試みが盛んになり、 そのような試みを総称して量子計算・量子通信と呼んでいます。 量子計算・量子通信において情報は物理系の量子状態に格納されますが、 この量子状態は周囲の環境からの影響で容易に変化してしまうので 計算・通信を計画通りに行うことが困難です。 このような物理系の周囲の環境からの悪影響を低減するための手法が 量子誤り訂正符号です。 しかし、量子誤り訂正符号だけでは計算の過程自体を周囲の環境からの悪影響 から守ることはできません。量子フォールトトレラント計算は量子誤り訂正符号を 用いて計算過程を守るための手法です。
一方通信においてベル状態(またはEPR対)と呼ばれる二つの物理媒体にまたがる 量子力学特有の状態を空間的に離れた二者間で共有する必要がよくあります。 ベル状態にある二つの物理媒体の片方を一方から他方に送ると、 大抵の場合送っている途中で状態が変化してしまい最終的に二者間でベル状態を共有できず、 ベル状態が劣化した状態を共有することになります。 空間的に離れた二者がベル状態が劣化した状態を共有しているときに、 各々自分が所有する物理媒体への操作と物理媒体への測定結果の交換だけで ベル状態を復元する手法をエンタングルメント純粋化プロトコルと呼び近年 注目が高まっています。エンタングルメント純粋化プロトコルと量子誤り訂正符号は 深い関係があることが知られています。
このページではこれらのお互いに関係が深い「量子誤り訂正符号」、 「エンタングルメント純粋化プロトコル」、「量子フォールトトレラント計算」 について私が書いた解説を載せています。(2003年6月23日更新)